坂道徒然草

乃木坂46、欅坂46に関して思った事を思ったまま書き連ねる徒然草。 Twitter→@masa_NGZ

【小説】 絢音と臆病なドラゴン

11枚目シングル「命は美しい」収録、最後の研究生PV「せかいの おわり は、」の世界観を借りた妄想小説です。

研究生PVを壮大な1つの物語として、その中からある1つのエピソードを切り取った、という体裁をとっています。

今作の主役は鈴木絢音ちゃんです。

小説など初めて書いたので読みにくいどころか小説としての体をなしているのか心配ですが…、感想の一言でもいただけると嬉しいです。

 

 

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 絢音と臆病なドラゴン

  ~《 せかいの おわり は、》 Episode of  Ayane ~ 

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ビルが建ち並ぶ街がある。
森もあり、山もある。
砂浜も、海も。


ただ、そこで生活しているであろう人影だけが、ない。

人間の居ない静かな世界が広がっている。

どこか遠くの世界へ行ってしまったのか。
世界の終わりが来てしまったのか。


そんな中で街中に目をやると、動く影が6つある事に気づく。

 

みり愛、純奈、蘭世、琴子、怜奈、絢音。

 

それが、影の主が持つそれぞれの名前。

他の人間が居なくなったこの世界で寄り添いあい助け合いながら生きている少女たち。


今、この世界には、6人しかいない。

 

------------------------ 1 ------------------------

 

みり愛と純奈が食糧調達に行った森から帰ってきたその姿は、他の4人を驚かせた。

額からは血が滲み、腕も擦り切れ、脚を引きずっている。

『凶暴なドラゴン』と遭遇し攻撃され、傷を負いながら必死で戻ってきた。

それだけ話して意識を失った2人を急ぎベッドに寝かせ、皆の世話焼き係となってしまっている怜奈がテキパキと治療を施していく。

 

そう、この世界には、ドラゴンが居る。

 

ドラゴンを倒せば、勇者になれるのかもしれない。
別の世界へ行けるのかもしれない。

だが、自然災害にも等しいドラゴンを倒そうなど、この6人には到底無理な話だった。

 

      ・ ・ ・

 

ベッドに横たわる2人を見て、絢音はある言葉を思い出していた。


  「ドラゴンの涙は傷を癒やす」


幼い頃に誰かから聞いた言葉なのか、残されている書籍や資料で見た言葉なのか定かではないが。

ドラゴンと言えば最強の生物として驚異的な肉体を持ち、高い知能ゆえに魔法のような物も操れるとも言う。


高い知能という事は、人間の言葉を理解してもらえるのではないか。
事情を話し、小さな瓶に一滴だけでも、分けてもらう事ができるのではないか。
絢音は考えを巡らす。

ただ、相手は有無を言わさず攻撃をしてくる凶暴なドラゴン、話し合いに応じてくれるとは思えない。
そこで思い出す、もう一つの言葉。


  「ドラゴンでも臆病で飛べないやつも居る」


そう、臆病なドラゴンならいきなり攻撃してくる事もなく、話しができるかもしれない。


絢音は、6人の中では最も非力だった。
缶詰も開けられないほどに。
そして、純真で純粋で、前に出る事もない恥ずかしがり屋だった。

だから、いつも皆に守ってもらうばかりだった。
こんな時こそ、自分が力になりたい。
皆に恩返しをしたい。


ただ、そんな話しをしても鼻で笑われるか、信じて貰えても行くのを止められてしまうかどちらかだろう。

 

そこで絢音は皆が寝静まり、空が白み始めた頃に1人で家を出た。

目指すは山の頂にあると言う、竜の巣。

 

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山の中は、生命力に溢れていた。

木々の葉のこすれる音、鳥のさえずり、枝を渡る小動物などの音を楽しみ、元気づけられながら山道を進む。

絢音は、自然豊かな土地で育ったのだろうか、山を歩く姿に危なげな所はなかった。

 

かつて、人間が居た頃にはハイキングコースでもあったのだろうか、草が生い茂って隠れてはいるが、ある程度整備された道を歩けるのは有り難い事だった。

心配なのは熊などの獣や凶暴なドラゴンに遭遇すること。

それらは縄張りがあり、定期的にパトロールしているとも言う。

みり愛と純奈は、縄張りに入り込んでしまったのだろうか。

だとしたら自分の身にも…、気を緩めてはダメと自分に言い聞かせる。

 

      ・ ・ ・

 

「あやねー?まだ寝てるの?」

絢音を起こしに来た蘭世が、顔をピョコンと覗かせながらノックする。

いつもは規則正しく起きてくる絢音がまだ起きてこない。

6人の中で一番の読書家でもある絢音の事だ、遅くまで医療や薬草の事が書かれた本でも読んでいたんだろうと思って声を掛けなかったが、さすがにもう陽も高い。

 

だが、部屋の主の姿は無い。

持ち主の性格を表すようにベッドのシーツは皺1つなく伸ばされており、使われた形跡はなかった。

上に置かれていたのは、一枚の紙片。

 

それを見た蘭世は慌てて怜奈と琴子の元へ行く。


 《 少し出かけてきます。心配しないで。》

 

「…森に薬草でも採りに行ったのかな…?」

絢音は薬草や山菜の知識が豊富であり、森へは何度も行っている。

だがそれは、みり愛と純奈というアクティブに動ける2人が護衛として一緒の時だけだ。

絢音1人で森に入って大丈夫だろうか。

不安を打ち消すように、琴子が提案する。

「私、森へ行ってみるよ」

その森へは、琴子も必ず同行していた。

薬草や山菜の事はサッパリ分からないが、なぜだか土中に埋まっているタケノコを見つけ出す事だけは驚異的な才能を発揮したからだ。

 

「うん…、でも、ちょっと待って」

考え込んでいた怜奈が押しとどめる。

「前に2人で歩いていた時に言ってた事を思い出したの」

 

 『ドラゴンの涙って、傷を癒やすんだって!』

 

その時は、そんな物をどうやって手に入れるんだと聞き流していたけど…。

もしかして、竜の巣に行った!?

だが、果たしてドラゴンが話しを聞いてくれるんだろうか…。


 『ドラゴンでも臆病で、飛べないやつも居るんだって!』

 

そうだ、ドラゴンは1匹ではない。
中には話せる大人しいドラゴンも居るのかもしれないが…。

 

不安が増してくる。
ただ、後を追いかけても今からでは山頂に着く前に夜になってしまい、危険度が増す。

2次災害になってはまずい。

今は森の様子を見に行き、もし居なかったら明日の日の出前に出発するようにしよう。

 

怜奈は看病のために残り、琴子と蘭世が森へ探しに行く準備を始めた。

 

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絢音は、水平線に沈みゆく夕陽を見て感動していた。
アチコチに擦り傷を作りながら、なんとか夜になる前に山頂に着いて辺りを見渡すと、そこには今まで見たことのない雄大な景色が広がっていた。

遥か彼方、海の果てからオレンジ色に染まった空が徐々に青くなり、藍色になり、黒へ移り変わっていく。

美しいグラデーション。

 

 今度、皆で見たいな…。

 

そう思って、我に返った。

そうだ、皆で見に来るためにも、ここからが大事だ!

洞窟に通じているであろう人が1人入れるくらいの横穴を見つけ、意を決して中に進む。

 

      ・ ・ ・

 

意識は、心地良いまどろみの中にあった。

眠りについてからどれだけ経つのだろう…。

数年か、数十年か、数百年か…、分からない。

1つ確かなのは、その眠りを破るように近づいてくる何者かが居るという事だ。

 

そのドラゴンは目を覚まし、意識を洞窟内に張り巡らせた。

 

      ・ ・ ・

 

「会えた…」

絢音は、細くて険しかった洞穴を抜けて、広場に出た。

遠い遠い昔の噴火口だろうか、奥の方は暗くてどこまで続いているのかもよく見えない。

 

『人間、このような所に何しに来た?』

 

声は、耳から聞こえた訳ではなく、脳内に直接響いてきた。

ドラゴンの喉や口の構造が声を出すのに向いていないのだろう。

これがテレパシーとでも言うのだろうか…、絢音はすべてを見透かされるような、精神世界に踏み込まれるような不思議な感覚を味わった。

 

『もう一度訊く、このような所に何しに来た?』

 

「どうしても、どうしてもお願いを聞いて欲しくて来ました!」

 

絢音は、この世界に6人しか居ない事を、共に暮らす仲間の事を、今も怪我で苦しんでる状況を、切々と話した。

 

そして、【ドラゴンの涙】を、一滴でも貰えないかという事を。

 

目を瞑って話しを聞いていたドラゴンは、絢音にとって永遠とも思える長い沈黙の後にようやく言葉を発した。

 

『人間では、【ドラゴンの涙】は手に入らない』

 

「!?」

 

『私はお前の精神世界を覗く事ができる。嘘をつこうとしているのでも無い事はよく分かった。どれだけそれを必要としているかもな。』

 

「じゃあ…、なんで…」

 

『ふむ、久しぶりに会った人間だ。邪悪な者でもなさそうだし、少し昔話に付き合ってもらおうか…。』

 

      ・ ・ ・

 

遠い遠い昔。

そのドラゴンはまだ幼竜だった。

 

ドラゴンと人間は別の世界に住んでいた。

ふとしたキッカケで見た人間は、小さくて沢山いて、実に不思議な存在だった。

興味をそそられたドラゴンは人間と仲良くなりたいと思い、人間達の村へ降りて行った。

だが、ドラゴンを初めて見た人間は恐怖に慄き、武器を取り攻撃を加えてきた。

まだ子供でもあり、まさか攻撃されるとは思いもしていなかったドラゴンは、深手を負い、翼も痛めた。

後を追ってきた母ドラゴンによって命からがら逃げ出したが、元の世界へ戻る事は叶わなかった。

 

その後、【ドラゴンの涙】の事をどのような手段でか知り、手に入れたいと欲した人間に何度も襲われ、戦う事になった。

いや…、戦いは好まないので、殆ど逃げ出したがな…。

そしていつしか、「空も飛べない臆病なドラゴンが居る」と人間たちの間に広まっていったのだ…。

 

      ・ ・ ・

 

絢音は呆然としていた。悲しかった。

いきなり襲われ重傷を負った2人と、同じ経験をしていたドラゴン。

長い年月の間にできていた人間とドラゴンとの間の心の壁。

何も知らずに厚かましくも薬を貰おうなどと思った自分を恥じ入った。

さらに、話す事に夢中で、ドラゴンの姿さえもよく見ていなかった自分に気づく。

 

傷は、まだ癒えていないようだった。

ドラゴンの側に歩み寄り、大きく残る傷痕に手を当て優しく撫でる。

愛おしい物に触れるかのように頬を当てると、そこから伝わってくる暖かさに自然と涙が溢れてきた。

 

その刹那。

絢音の周りを虹色の光が包んだ。

 

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絢音がこぼした涙の一滴がドラゴンの傷痕に触れた瞬間。

眩いばかりの光を放ち、虹色に輝く暖かい光が絢音とドラゴンを包み込んだ。

 

その光の力なのだろうか、目の前で傷痕がどんどん塞がっていく。

 

ドラゴンが心地よさげに喉を鳴らしながら、絢音に語りかける。

 

『心優しき人間の涙は、ドラゴンの傷を癒やす力を持つ。

 少女よ、本気で悲しみ、想ってくれてありがとう。

 こんなに嬉しい事はない。』

 

微笑んだドラゴンの目から涙がこぼれる。

 

…それはやがて結晶となり、絢音の手元に落ちてくる。


『【ドラゴンの涙】は、嬉し涙だけが効果を持つのだ。

 かつて人間はその事を知らず、痛みにより涙を得ようとした。

 もっとも、ドラゴンは痛みでは涙は流さんがな…。

 だから最初に、人間には手に入らないと言ったのだが…。』

 

『この洞窟に入ってきた時から、お前の精神世界で感じる波動は暖かく心地よかった。

 それで話しを聞いてみようと気まぐれを起こしただけなのだがな…。

 それで仲間を助けるがよい。』

 

絢音は、もっとこのドラゴンと語り合いたいと思った。

人間により身体と心に傷を負わされながら、その人間を迎え入れて話しを聞いてくれたドラゴン。

臆病なドラゴンではない。

強く、優しいドラゴンだった。

 

世界の色々な事を聞いてみたい。

自分の大切な仲間についても聞いて欲しい。

だが、今も苦しんでいる2人の事を思うと、一刻も早く帰らなければ。

 

「また、会いに来ていいですか?」

 

『ドラゴンの寿命は長い。一瞬の暇つぶしにはなるだろう。』

 

「ありがとうございます!今度は皆で来ます!!」

 

『帰りは我が眷属の者に守らせよう。すぐに仲間の元に戻るが良い。』

 

「はい!では、失礼します!!」

 

絢音は90度以上に深いおじぎをし、外の世界へ駆け出した。

 

------------------------ 5 ------------------------

 

空が、夜の闇から明るさを取り戻し始める頃。

 

玄関の扉を開けて、絢音が戻ってきた。

まだ皆は寝ているだろうと思い、そ~っと音を立てないように入ったのだが…。

 

「あやね!!」

 

鬼のような形相で仁王立ちしている怜奈。

その両隣には、涙ぐみながら笑顔の蘭世と、仁王立ちを真似しながら笑っている琴子。

 

「どこに行ってたのよ!!心配かけないでよ!!」

 

涙を目にためながら抱きついてくる怜奈。

蘭世と琴子も、一拍遅れて抱きついてくる。

 

「皆…、心配かけてゴメンね。」

 

そう言ってカバンから【ドラゴンの涙】を取り出して見せる。

 

やはり、怜奈の予想が当たっていた。

「やっぱり!バカバカバカ!!竜の巣に行くなんて!!」

「ホントに良く無事で帰ってきてくれて…」

3人とも、目が腫れている。寝ないで待っててくれたのだろうか…。

どれだけ心配をかけた事か、しっかり謝らなければ。

 

でも、今はそれよりも。

 

【ドラゴンの涙】は、竜の不思議なチカラにより小瓶の形になっている。

そこから一滴づつ、みり愛と純奈の体にかけると、不思議な光に包まれ、怪我がみるみる治っていくのが分かった。

 

「ん…」

「あれ…?私…、どうしたの?」

 

目を覚ました2人は、事情が飲み込めていない。

怜奈と蘭世、琴子、絢音の4人は、泣き笑いするだけでその疑問に答えてはくれなかった。

 

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食卓を囲みながら、皆で絢音の冒険譚を聞いている。

 

「そっかぁ…、私達を襲ったドラゴンはお母さんなのかもしれないね。」

「今度私達も話しに行って仲良くなって、人間への不信感を解いてもらおうよ」

 

みり愛と純奈がそう話し合っている。

ドラゴンに襲われて大怪我したというのに…、強いな、見習わなきゃな、と絢音は思う。

 

横から、琴子が話しかけてきた。

「あんなに臆病だった絢音ちゃんが、すごい強くなったよね!」


「そうそう、もう勇者だよね!」

と、蘭世が同調してるのか、茶化してるのかよく分からない発言をする。

 

そうなんだろうか。

自分では変わったとかは良く分からないが、褒められるとなんだか照れくさい。

 

「え~、やめてよー、恥ずかしいよぉ~」

 

どうやら、恥ずかしがり屋な面は変わっていないようだ…。

 

 

~ F i n ~