坂道徒然草

乃木坂46、欅坂46に関して思った事を思ったまま書き連ねる徒然草。 Twitter→@masa_NGZ

【小説】ブランコ

16枚目シングル「サヨナラの意味」のカップリング曲、アンダーメンバーが歌う「ブランコ」MVから妄想を膨らませた勝手小説です。

 


乃木坂46 『ブランコ』Short Ver.

 

 

あくまでも「映像」から着想を得ているので、歌詞はまったく関係ないです。

MVの一つの解釈として書いてみました。

様々に想像を膨らませて、様々に解釈を得られるというのは素敵な作品ですね。

 

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 ブランコ

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東京からどれだけ離れているのか誰も知らない海の上に浮かぶ小さな島。
道路はコンクリートで整備され家屋も見えるものの、人影は見当たらない。
放棄された無人島のようにも見えるが、この島には16人の少女たちが生活している。
先に島に来ていた8人と、そこから1年半ほど経ってから1人、2人と増え始め、3年半後に一緒に来た6人を最後に大きな変動は無い。

 

この島もほんの一ヶ月ほど前までは19人居たのだが、4ヶ月に一度やってくる船に乗って3人が島を出て行ってしまった。
入れ替わりで島にやってきた人は1人も居ない。
船に乗る事ができない、「選ばれなかった」少女たちだけが残った。
半数ほどは一度は島の外に出た事があるものの、あまりの速度と目まぐるしさに記憶にも思い出にも残らないまま島に戻ってきてしまった為、外の世界について実はよく分からない。


16人の少女たちは、外の世界へ出る『希望』と島に残る『絶望』の間を、ブランコのように行ったり来たりする日々を過ごしている。

 


------------------------ 2 ------------------------


ある日、少女たちが外に出た時、地面に大きな影が落ちた。
空を見上げても結局は黒い影にしか見えないが、大きな翼を広げ、長い尻尾を揺らしながら悠々と大空を舞うその姿は、優雅で雄大で、自由だった。
見上げる事しか出来ない少女たちには、恐怖よりも畏敬の念が勝ったのか。
はたまた手に入れたい「希望」として見えたのか。
思い思いの「武器」を手に、揃って走り始めた。

 
 この世界には、ドラゴンが居る。

 
それがこの島の伝承。
凶暴なドラゴン、賢いドラゴン、臆病なドラゴン…。

今、空を舞っているドラゴンは果たしてどのようなドラゴンなのか。


少女たちは1列に隊列を組み、時に笑い声をあげながら進んでいる。
見る人が見たら、先に居た8人と後から来た8人が交互に並んでる事に気付いたことだろう。
この一体感と強い絆は過酷な環境で生き抜いていくのに大いなる強みである。

ただし、外の世界において先に居る者たちの作る高い壁を乗り越える為に、1人の力でやり遂げる場面も多いだろうから、この結束が逆に足枷となるのかもしれない…。

 

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先頭を歩いていたHINACHIMAが、何かに気づいて声をあげる。

なんの気まぐれか、ドラゴンが手の届くくらいの高さにまで降下してきて、その姿がハッキリ見えた。

RENACHIの持っている「珍獣図鑑」にも載っていないのだろうか、本を落とす程驚いている。

 

ドラゴンが列の真上を通ろうとする時に、少女たちは空に向かって思い思いに手を伸ばした。

自分自身で選んだ「武器」をかざしながら、真剣な表情の者、満面の笑顔を見せる者。

 

そして最後尾にいたRANZEは、思いつめたような、強い決意を秘めた表情を見せながら手を伸ばす。

RANZEは島に最後に来た6人の中の1人で、常に後ろに居て目立つ事をしないが、それだけに内に秘めた想いは強い。

そしてその手に、「武器」は無い。

有るのは首から下げた水筒だけ。

誰かと戦ったり力を誇示したりするのではなく、ひたすら「前へ歩く」為に必要な物。

 

遠ざかるドラゴンを追いかけて皆が走り出した後をついていくRANZEは、ふと気づいた。

 

「同じところをグルグルと繰り返し回っている?」

 

追いかけても追いかけても、近づく事ができない。

同じ場所から、抜け出す事ができない。

自分たちの心の迷いをドラゴンに見透かされているのか。

不思議な力によってただ弄ばれているのか。

 

手が届きそうな「希望」と、追いつけない「絶望」。

ここでも繰り返される心の中の【ブランコ】。

 

 

その葛藤の中でRANZEは決意し、そこで立ち止まる。

手の届かない幻想をただ追いかけるのではなく、しっかりと自分自身を持つ事。

それこそが、無限に続くループから脱出するただ一つの方法のはずだ。

 

静かに振り向くと、予想した通り前を走ってるはずの仲間たちが後ろから走り寄ってきた。

皆も驚き動きを止めて息をのむ。

JHONSONは振り向いて後ろを確認しているが、当然そこにRANZEの姿は無い。

 

やっぱりそうだ。

ただ「何か」を漠然と追いかけるだけでは道は開けない。

 

そう気づいた瞬間、RANZEの心臓が大きく鼓動を打ち、思わず胸を押さえて前のめりによろけてしまう。

RANZEが苦しみだし…、背中に半透明な光が浮かび上がる。

徐々に形作られる…、ドラゴンに酷似した翼。

 

これは…、ドラゴンの不思議な力の一端なんだろうか。

だが、他の皆はその異様な姿を忌避するでも嫌悪するでもなく、思わずRANZEに駆け寄ってしまう。

 

遠い昔に、人間の姿となったドラゴンと人間の間に子供でも生まれ、その子孫だったりするのだろうか。

そう思った者が居たとしてもほんの一瞬の事だったろう。

 

その時に、全員が悟ったのだ。

追い求めていた物は、大空を舞う不確かで手の届かない物ではなく、自分たちの中に元々有る物だったんだと。

背中から見えるドラゴンの翼は、おそらくはその不思議な力がRANZEの中にある「想い」を翼という形に現した物なんだろう、としか説明のしようがない。

だが、少女たちにとってそんな事は些末な事だった。

 

それぞれが手に取っていた武器を地面に投げ捨ててしまう。

本当の「武器」は、自分たちの中にあると気づいたのだから。

 

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夜の浜辺、幾つかの篝火の中で踊る少女たち。

それは、遠い遠い昔にこの島の住人たちが偉大なるドラゴンに捧げた祈りに通じる物があるのだろうか。

かつて、実際に同じ踊りが舞われていたと、なぜか全員が信じていた。

 

少女たちの中で、 『希望』と『絶望』の間を行ったり来たりしていたブランコ。

だが、ブランコで上がった時、つま先の先に広がる大空が、星空が、世界が広がっている事に誰もが気付いた。

 

日の出の時間まで、思い思いに浜辺を散策する少女たち。

 

水平線の向こうから、朝日が昇るのももうすぐだろう…。